作りたい造形物によって方式が分かれる
一言で3Dプリンターと言っても、作りたい造形物によって選ぶプリンターが変わってきます。3Dプリンターは「熱熔解積層方式」と「光造形方式」の2つの種類があり、ここでは熱熔解積層方式について解説していきます。
細い樹脂
一番普及している熱熔解積層方式では材質にパスタ状の細い樹脂を使い、約200度
に加熱して形状を変化させ思いのままの形に積み上げることで設計図に忠実な作品を
完成させるとても頭の良い最新型のマシーンです。
加熱して溶解させたABSなどの樹脂をプリンターヘッドで少しずつ押し出して
積み上ることで、任意の3次元の物体を見事なまでに作り上げます。
そこそこ高温に加熱するのは樹脂を柔らかくするためでこの過程を省くとまともに
加工することが出来ず、いくら高性能な3Dプリンターでも設計図に従いオペレーター
を満足させるだけの創造物を提供することはできません。
皆さんの生活する部屋にも整理整頓されてしまわれている物が多数あると思いますが、
そのほとんどが高温で加熱すると変形したり柔軟になったりするはずです。
美容液が入っているプラスチックの容器をライターで炙って加熱すれば溶けて穴が
開くでしょうし、その状態なら人間の力でも変形させるのは容易いことでしょう。
この原理を3Dプリンターも採用しているのです。
低価格が売りです
3Dプリンターの中でも一番人気の熱熔解積層方式は、どうしてここまでの人気を誇り 誰からも必要とされるように進化を遂げたのでしょうか。 まず挙げられるのは3Dプリンターとしてはかなりの低価格を実現したことでしょう。 魔法の箱のような能力を備えているにも関わらず10万円以下となんとも現実的な お値段で販売されているので「ちょっと頑張れば手が届きそうだし買っちゃおうかな」 「光造形タイプの500万円のは今のお給料じゃ手が出ないけどこの熱熔解積層方式 なら9万円だしローン組めばなんとか買えそうだ」と、造型マニアや新しいもの好きの 心を絶えずくすぐって揺さぶっているようです。 いくらマシーンが魅力的でも対価に一戸建てに匹敵する金銭を支払うことに同意できる 人は限られており、結果的に普及するまでには時間がかかってしまいます。 なので誰の目にも明らかなほど低価格の熱熔解積層方式3Dプリンターがここまで もてはやされているのでしょう。 また材質に使われる樹脂(ABS)は一定の強度を備えているのも、扱いやすさから 利用者を増やす要因として挙げられるでしょう。
精度の低さ
熱熔解積層方式は価格が低いためというわけではありませんが、完成品の精度がやや 低いのが玉に瑕という人もいるようです。 この方式では変形しやすくしたパスタ状の樹脂を積み上げていく作業を繰り返すため、 表面にはその模様が浮き出てしまいがちなのです。 もともとが幾層ものパスタなのでそれも仕方が無いのですが、美を追求する完璧主義者 にとっては大いなる不満となり、熱熔解積層方式のデメリットとして見過ごすわけには いかない問題点になっています。 また材質が樹脂であること、造型時には過熱していることで、熱が引いた後には多少 縮小してしまうのも精密さを求める場合は不向きであるといえます。 なんメートルもなんセンチも縮小するようなことはありませんが、厳密な寸法を再現 したいのなら樹脂製で加工すること自体が間違いというわけです。 眺めたりたまに触れたり舐めたりする程度の造形物なら大きな問題にはなりませんが、 精密さを求めるのなら熱熔解積層方式は不向きでしょう。